背骨(脊椎)が外力を受けてタテにつぶれることが圧迫骨折です。
魚の背骨をイメージしてみて下さい。
小さな円筒形の骨(椎骨)がいくつも連なって、棒のような背骨(脊椎)をかたち作っていますね。
強く尻もちをついたり、交通事故などで背骨(脊椎)にタテ方向に強い力が加わり、いずれかの椎骨に力が集中すると、その椎骨がつぶれてしまいます。
それが圧迫骨折です。
この傷害は、閉経後の女性に多くみられます。
なぜかというと、閉経後は女性ホルモンの分泌が減少します。
女性ホルモンは骨を養う作用もあるため、骨がスカスカになってくるのです。
(骨粗鬆症・骨粗しょう症)
そのため、骨が強かったときにはありえないような、せきやくしゃみ、軽い尻もち、軽い転倒、程度のことでも圧迫骨折が生じてしまうのです。
この痛みは慢性化しやすいものです。
また、圧迫骨折を生じると、他の椎骨も圧迫骨折を生じやすいということも報告されています。
受傷後から約1ヶ月の間は、硬性コルセットを装着して固定、安静に努めることが必要です。
骨折部は不安定で容易に変形しますので特に注意が必要です。
つぶれた椎骨が元の形に戻ることはありませんが、それ以上につぶれるのを防ぎ、つぶれた部分がくっつく(癒合)のを促すには、やはり固定、安静が重要です。
お歳を召された方の場合、この時期は入院となることが多いようです。また、状態によっては、手術によってつぶれた椎骨に骨セメントを注入する(BKP)方法なども行われます。
強い痛みは徐々に癒えてきますが、この傷害が生じる背景には骨粗しょう症が潜んでいますので、痛み止め(鎮痛剤)や湿布(経皮鎮痛消炎剤)とともに、骨粗しょう症改善のための処方がなされます。
痛みがすこし軽くなったからと言って、自己判断での中断はお勧めできません。
なお、私見ではありますが、痛み止めが合わずお腹が荒れる、という方もいます。
そのような方々には、鍼灸マッサージを試してみることをぜひお勧めします。
骨粗しょう症改善のための処方とともに、重要なのがリハビリです。
腹筋・背筋をはじめとするストレッチや筋力トレーニング、日常生活のリスクを減らすための歩行訓練など、退院後も回復状態に応じて行われたり、自主メニューを渡されたりします。
私見ではありますが、痛みが続いていると、なかなか積極的なリハビリが行えない場合も少なくないようです。
このような場合にもぜひお勧めしたいことの一つが鍼灸です。
痛みをやわらげることにより、積極的なリハビリが行いやすくなります。
圧迫骨折を生じた椎骨は、しだいにくっついて(癒合)いきます。
しかし、骨の状態などによっては、つぶれた部分がくっつかないままになってしまう(骨癒合不全・偽関節)こともあります。
この場合は圧迫骨折の周辺が常に不安定となり、体動時には強い痛みが常に伴うような状態が続きます。
私見ですが、このような例では、残念ながら鍼灸マッサージによる緩和はあまり期待できません。
残念ながら、圧迫骨折そのものを治すことは鍼灸マッサージにはできません。
ただ、私見ではありますが、圧迫骨折によって生じている、周辺の筋肉の緊張を緩めたり、脳や脊髄で痛みの情報を抑制(内因性鎮痛)することにより、痛みをやわらげることは期待できます(※1、2)。
●参考文献:
※1 (骨粗鬆症の痛みに対する鍼灸(脊椎圧迫骨折を生じた方を対象とした比較研究))
Arch Osteoporos. 2016 Dec;11(1):34. Epub 2016 Oct 20.
Schiller J, Korallus C, Bethge M, Karst M, Schmalhofer ML, Gutenbrunner C, Fink MG.
今田 開久 , 清野 充典 日本東洋醫學雜誌 54(別冊), S132, 2003-04